[review]謎の進学校 麻布の教え

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最近プレゼンスを落としてる麻布ですが、灘とも先代の校長同士が懇意の関係にあったこと、最近麻布に接点が出てきたことから 手にとって見ました。




麻布文化祭にて


公立に近い一貫


まずこの本自体がさほど整理がついていません。インタビュー形式で手を入れていない良さもありますが、 やや冗長です。またありがちな話として、 タイトルに「謎」の一言がつけられていますが、 いうほど謎な部分はありません。

教師の純粋培養率(obが占める比率)が1割というのは、diversityを確保する上で絶対的な競争力になります。 麻布の一番の強さはここにあると思います。純粋培養率が高すぎると自ら体質を変えるドライブがかからなくなり、 特定の方向に弱点が深化していきます。(たとえば教師に理系の変人が多すぎると常識が無くなり、 頭の固い文系が多すぎると実態を生み出すための思考なり技術をが身につかなくなります)



プログレス21


麻布がプログレス21を使ってるのは前から知ってました(市川の評判の悪い以前の校長が麻布出身で、麻布を真似て導入した話も知っている)。 プログレス21の一つの利点はnativeが書いているためよりシャープなスタイルで身につけることができることですが、 果たしてそもそも対話が苦手な男子学生に合うのかという問題があります。

ただ麻布は国語ではかなり書かせるので、書き言葉には耐えられるかもしれません。 他方で話し言葉はまた別の能力なのでこの点は下記にもある通り耐えられるかは疑問。 周辺の麻布生を見ていてもそれは感じます。



高校受験枠の不在

高校受験枠を増やしてdiversityを確保したほうがいいのは他校と同じです。中学から入ってきた子供達は居心地は良いでしょうが それに浸かりすぎて幼児化します。純化されすぎると不確実性によるショックへの耐性が急激に落ち、 また器が小さくなります。

その点開成、渋幕、灘といった高校からの枠がある学校は、そこに異質な人間、それも雑な扱いをされがちな公立で 生き抜いてきた子を加えることで違う空気を齎すことができるようになります。人としての強さも備える高校受験組みの大半は、 確実に一貫組が持ち得ないものを持ち込めるため、学業以外の面で大きなポジティブな影響力を発揮します。



アルバイトOK

アルバイトokなのは高評価。職業体験がないと人格形成上生きていく上で何が必要かがわからなくなるものです。 幸い港区には優れた企業がゴロゴロあるので、 その辺りも活かせるようになったら学校としては相当強いと思いますが、そこまで気が回ってるようには見えません。 この辺りの対応はSFCHS辺りが強さを備えています。



「勉強しなくても受かる」は強調しなくても

この本を通じて再三出てくるフレーズであり、おそらくは少なからぬ割合の現役生がプライドを持っている、 「麻布生は勉強しない」と、「集中力がある」の二つ。そもそも中学受験で下地を作っていることは 他の一貫生と事情は同じなので、さほど強調しなくていい気はします。そしてこれが公立に近いと感じる一番の理由です。

「来るべくしてきている上の1/3」「受験勉強頑張った真ん中の1/3」「なんでここにいるのかわからない下の1/3」 と分けられる東大生ですが、売りにしてる競争力の中核がこれであるならば、真ん中寄りの子は多いのかなとは思います。 文化祭の展示の完成度もグダグダなので、集中力を売りにするのであれば高い完成度のものは見たいところです。



対話の強制ができるかどうか

英語指導について過保護との記述がありましたが、要するに対話を強制できるかどうかにかかってるんじゃないでしょうか。 書き言葉では限界もあれば自分から逃げられるので成長しません。スキル以前に姿勢の問題かなとも思います。 そしてそれが徐々にできなくなっているであろう点がかいま見えるところに、今の麻布の限界をやや感じます。

野生を残しているのが麻布の良さだと個人的には認識してますが、言葉が丁寧に出てこないなり、 対話の経験がさほどないことは他の男子校と大差ないようには思います。政経の授業の冒頭で、 「センターで点が取りやすいからよく聞け」と学生の注意を集めるよう仕向けるとの記述がありますが、 難易度が低かったのも数年前までの話で、今はそれで通用しません。

尤も学校側もわかってるとは思いますが、他者との対話の基礎を身につけるのは倫理政治経済くらいでしか期待できないので、 ここは頑張ってほしいなと。



生徒との距離の近さ(とはいえ全員は無理)

学校の先生側が生徒一人一人を見ている強度が違う、というのは実感としてあります。 とはいえ1学年300近くいる生徒の全員を把握している教師はまずいないと思いますが。 麻布がまだ持ちこたえている一番の理由は 体制側にあるのかなと思います。(生徒側は環境要因でいくらでも大きく影響を受ければ、 自分を客観視できている子は、通常欧米圏の海外進学を考えている子+アルファくらいだとも)

麻布の受験者数が落ちてるのは、はっきり言ってしまえば親の器の狭さが直接の原因だと思われます (受験指導を望みすぎて学生が幼児化しても構わないと言うスタンスにシフトしています。当然これが学生を甘やかし、 人を束ねる力を失わせ、器を小さくさせる大きな原因となります)。

さほど気にする必要もないかと思いますが、それで粒が揃わなくなり始めると学校の競争力として相応の危険はあるのかも。 JGも一時期不人気になりましたが盛り返してきたのも、あの文化が絶対無二のものであり何物にも変えがたいと認識されているため。 ですが、根がプロテスタントの麻布ではあるものの、今はその翳はありません。麻布の「自由」を定義するためには 歴史を振り返る必要があります。そこを見失いかけている気もします。



自校を客観視する姿勢を

「最終学歴・麻布」で十分やっていける教育、というのはさすがに言い過ぎです。他校を見ればその言葉はまず出てこないでしょう。 どこの学校の学生も自校を万能視して外の学校の事情を知ろうとしない傾向があり、 そこから盲目的な万能感が生まれがちだという話は常々していますが、麻布はその典型に見えます。

この本全体に言えることですが、科学の要素が話に出てきません。つまり麻布らしさという要素の中核に、 科学の競争力が挙がることが少ない、 ということを意味しています。自由は各校の歴史に裏打ちされ、その積み重ねの上に定義される固有のものですが、 それ以前に物理的な限界を理解させる科学への理解が表に出てきていないのは弱点と言えます。










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