[学生向]
マクゴニガルに学ぶ
ライフスタイルと
やりたいことの動機付け

keyword: マクゴニガル,やりたいこと,進路,
心理学,ライフスタイル,意志力
(>>>アメブロ版)



生徒がマクゴニガルを読んでいると聞いて手にしてみました。 以前から名前は目にしていたものの遅ればせながらというところです。 TEDでも再生回数が多いマクゴニガルですが、記されていることはシンプルであり、科学的根拠もあれば、 また実践しやすいものであることが支持を受けている理由かもしれません。

同時に、ふとよぎったのが、多くの学生が口にする、「やりたいことがわからない」の言葉。 実は科目や分野、業種に関心があるのではなく、自分らしい生き方なりライフスタイルをどのように形作ればよいのか、 迷っている学生が多いのではないかと考えていたところでしたが、マクゴニガルの主張は大いに参考になるかもしれません。



3つの力


まず1章で、意志力(willpower)には、「やる力」「やらない力」「望む力」の3つの力があると指摘しています。 「やる力」は面倒なことも嫌がらずにやりきる力、「やらない力」は誘惑その他に負けずに自身を制御する力、 「望む力」は目下の面倒なことや誘惑ではなく、将来にわたる理想像をイメージし、そこに向かっていく力のことを指しています。 そしてこの3つの力は各々前頭前皮質で生み出されているのだそうです。



瞑想・運動・6H+の睡眠・ストレス


そして瞑想を行うことで上記の前頭前皮質による自己コントロールや、そもそもなぜそうした行動をとっているのかを理解する 自己認識の力の支えとなる灰白質の増加に繋がるのだそうです。

また継続的に運動をおおなうことで、灰白質と白質の双方が増加するとのことです。

6h以下の睡眠は前頭前皮質の機能を低下させるため、十分な睡眠が重要となるとも記されています。 睡眠不足の状態では糖分の吸収が不十分となり、自己コントロールが利かなくなってしまう、ということのようです。

ストレスが意志力を低下させるとも記されています。直観的に腑に落ちるところではあります。



モラル・ライセンシング


本書で個人的に最も興味深かったのがモラル・ライセンシングです。これは自身が良い事をしたときに、 その分悪いことをしてもかまわないと、無意識に判断して勘違いしてしまう効果のことを指す、心理学上の効果のことです。

つまり自身が良い事をしたと判断できる、がんばった事、成果を実感した後に、その反動を生み出してしまうわけです。 例えばダイエットを成功した後の「ごほうび」としての暴飲暴食から来るリバウンドなどが典型で、 これは学習にも言えそうです。例えば、試験前だけ頑張った「ごほうび」として、その後ダラダラと生活を送ってしまうことなどは まさにこれに当てはまるのではないでしょうか。

本文には面白い事例が挙がっていて、ヘルシーな野菜サラダとジャンクフードが並んでいた場合、 ジャンクフードを選んでしまう人が大半のようです。結局ヘルシーな野菜サラダはいいことと判断し、 心の底では不味いものだと認識しているため、そのような事態が起きるようです。

著者はこの罠に陥らないようにするため、なぜ良い事をしようと思ったのかを考えることを推奨しています。 頑張ること・よい事をしたこと自体に着目するのではなく、そもそもなぜそうしたのかを思い起こせば、 それが「望む力」と結びついて自己コントロールができると言うことです。 身体が望む野菜サラダを食べ続けることは、理想の自分へ繋がれば、今の自分もちょっぴり幸せにしてくれる体験なんだ、 と思えれば、楽しい生活体験を積み上げることが出来そうです。

UI/UX分野で定評のある本書


ドーパミン≠快感物質


既に常識としている一方も多いかもしれませんが、ドーパミンは覚醒・意欲・目標思考行動のレベルを全体的に向上させる物質です。 快感をもたらすのはオピオイド。なおこの事実は別の本(「インターフェイスデザインの心理学」)でも見かけました。

「やりたいことをやる」その動機がドーパミンの放出であるため、快感を感じていなくとも、 ドーパミンの放出を促すような刺激にさらされていると、いつまでもその行動なり意欲の上昇をもたらすことになります。 例えばついつい携帯の画面やSNSを必要でもないにも拘らず見てしまうのは、断続的な通知や目新しい情報が 絶えず入ってきてしまうためです。

これはかなり怖い話でもあり、購買意欲を促すよう、マーケティング上のいろいろな仕掛けが街中にはあふれており、 普段生活しているだけでその目論見に嵌められてしまうという事実があります。

言い方を変えると快感なり満足を伴う対象でなくとも、何かに急かされるように行動を継続してしまうということが 置きうるわけで、しかも当の本人はそうした仕掛けに無意識のうちに、嵌ってしまうということになります。

学生の「やりたいこと」に適用して考えてみると、これもまた怖い話に見えてきます。 「やりたいこと」が自身の理想像と繋がる、つまり「やる力」によって促される、大きな目標に繋がる行動であったり、 具体的にその学生と周辺に望ましい利益や幸福をもたらすものであればよいのですが、

「やりたいこと」が享楽的であったり、実は何ら利益や幸福を自身と周辺にもたらさないものであったとしても、 「やりたいこと」への衝動を止めることが出来なくなってしまうということになります。 この場合、「やりたいことをやる」「やらせている」自由放任の過剰な家庭は、 学生を「尊重」することが果たして正しい意思決定なのか、見失う危険性も大いにあります。



恐怖管理

自身に危険や脅威を感じた状態になると、快感を得ることが出来る誘惑の対象にすがり付きたくなる、という恐怖管理理論 についても言及されています。つまり「やらない力」が弱まってしまうわけです。

そのため恐怖を感じていたことで誘惑に負けてしまった人に対してなすべき善後策は、正しい忠告を与えることではなく、 安心感を与えることであるようです。安心感を与えることで「やらない力」が息を吹き返すためです。



将来の価値/割引現在価値


人は将来の大きな価値よりも、今手元にある小さな価値を優先するという話が展開されています。 これはファイナンスで学ぶ割引現在価値と同じ話で、例えば一週間後に手に入る200円よりも、 今手元にある100円を好む傾向があり、手元に確かに存在するもののほうが価値が高いとみなすためです。 経済学ではこれは流動性選好という言葉でも表現されます。 言い方を変えると、手元にあるものを失いたくないという動機がまず強く働くことも原因しています。

多くの学生は職業観のリアリティが無いため、長期的な見通しを立てた上で手元の科目学習をしていません。 それはペーパーが強く学生であればあるほどそうです。そのため手元で面白いと感じるものにばかり目を奪われてしまい、 すぐに手に入るものに満足しては、そこで辛抱していたならば手に入っていたであろう大きな成果を逃してしまうことが往々にしてあります。

そうならないためにはどうすれば良いのでしょうか?将来の自分の像を繰り返しイメージし、 「望む力」を引き出すことが重要ということになります。 なりたい自分、そこで得られるものが自分をより理想に近づける。そのイメージをしっかりと、 丁寧に作り込み、自分のものとするには、たった今だけ語っていても何にもなりません。 将来に渡る洞察も必要です。

大きなスケールだと例えば世相が人々の感情に与える影響や、学生にとって見れば学校やクラスの雰囲気といったものに 感染するのがその例と言えます。



梅田にて学生たちと


ミラーニューロンが人間理解を促す


ミラーニューロンはドーパミンの効果以上に知る方は多そうです。これがあるからこそ人は他者に共感をしたり、 友人の不幸を我がことのように辛く、痛みを分かち合うことが出来たりするわけですが、 これが悪く働く場合もあり、周囲が誘惑に負ける状況下にあると、その感覚が「感染」し、自分も抗えなくなってしまうようです。

よい雰囲気・環境の中で自身を磨くことで自身を高めることが出来る。そして意志力の強い人の傍らにいることで、 自らも強くなれる。そうした相乗効果が見込めることには、こうした背景があるようです。



やりたいことを学生に見つけてもらう


一通りまとめてみましたが、詳細な事例や説明は本書を是非ご一読ください。ここで改めて振り返りたいなと考えたのは、 「やりたいことがみつからない」と大なり小なり不安に感じている学生達について考えることです。

やりたいことをやるというのは、マクゴニガルの主張によれば、3つの力から構成される意志力によって、その成否が決まると言えます。 他方で多くの学生は、そもそもやりたいことを見つけることに、皆一様に悩んでいます。

冒頭でも記したとおり、多くのこうした学生と話していて最近思うのは、特定の科目や分野、 業種に関心が及ばないがために悩んでいるというよりは、そもそもどのような人となりでいたいのか、といった、 ライフスタイルに即した、人生観そのものの方向性について思い悩んでいるように見える、ということです。 そして自分もそんな一人だったと思います。

尤もそんな風に悩んでしまうのは、やはり科目学習をやらされすぎているからだとも思うところで、 そんな、必要な情報やヒントを与えてもらえる環境にいるわけでもなければ、 その手がかりを掴むにも時間に追われる学生を不憫に思う次第です。

おそらく彼ら彼女たちに必要なことはシンプルで、本書にあった瞑想や適度な運動を継続する習慣で、これによって 意志力が強くなり、自身の生活をより洗練された形で整えることで、学習の対象や進路については必要以上に思い悩むことは 無くなるのではないかと感じました。

勿論進路選択は、特に理系の場合職業選択に直結することが通常ですから、分野や業種の差異に注意することは重要です。 ただそれをいくら比較考量したところで、自身のライフスタイルや人生観そのものが降って来ることは無いとは思います。

一部の学生たちと、この本を読むことを通じて、「今度フットサルやボルダリングにでも行こうか」という話をしています。 野原で目を閉じて深呼吸をし、瞑想するのもよさそうです。そんな時間もまた指導には大切なはずで、 学生との絆も、学生間の絆もより手ごたえのあるものと変わるものだと考えています。










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