[review][森孝一院長]
ジョージ・ブッシュの
アタマの中身

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院長,カトリック,プロテスタント
(>>>アメブロ版)



数年前まで神戸女学院高等学部長を退いて、現在は院長の森孝一先生。 今も現役生(高校生)からの信頼が厚く、また宗教の対立軸を超えた対話の場を設ける活動をしていらっしゃるとの話を 現役生から伺い、文化障壁を超えることを一つの大きなミッションとしている私共としても、 どんなことに取り組んでいらっしゃったのか興味がわき、手にしてみました。

トランプ選出で、ブッシュの悪夢再びと声を上げる人たちもいる中で、ブッシュの際は何で選出されてしまったのか、 改めて理解したいと思ったのも動機のひとつです。論旨もシンプルで時間を書けずに読むことが出来るので、 普段政治にまつわる新書を読まない学生にはおすすめです。大学生がレポートを書く際の参考文献の1冊に挙げるくらいの 分量です。

なお出版されたのは2003年です。ブッシュ選出で短期間で纏め上げた本であることがあとがきに記されています。 同じ森孝一先生の「宗教から読む」アメリカ を参照されたほうが、細かい話はわかるのかもしれません。 読み次第更新します。



何であのアホが?


冒頭からストレートに、何でブッシュみたいなアホが選出されたのか、不思議でならない方々も多いかと思います、との 指摘をしているところがまず面白いところです。実際薬物での逮捕歴もあればボンクラだったエピソードが当時から漏れていた ブッシュですが、その後30代の終わりに按手と呼ばれる教会での儀式を通じて、プロテスタントとしての熱心な活動を始め、 宗教右派(プロテスタント福音派(evangelical)を中心とした政治活動にも積極的に関わる(原理主義)、キリスト教の保守的勢力)に 合わせた政策を掲げていく過程が記されています。



宗教右派というマジョリティ


evangelicalはアメリカの総人口の4割、そのうち宗教右派と呼ばれる人たちは19%いると記されています。 無宗教が標準の日本人の感覚するとかなり驚くべき数字です。 そしてブッシュが演説のたびに宗教色を帯びたフレーズを援用することで、このマジョリティからの支持を受けたのだ、 という指摘がされています。

そして宗教右派の中には、主に貧困層を底上げしたいと願う知的水準の高い人々と、 十分な教育を受けることが出来ないけれども、そうであるがゆえにブッシュに親近感を持った層がおり、 ブッシュはこの層を中心に人気があったようです。

なおアメリカの公立小学校では宗教教育が敷かれています。勿論政教分離の原則はありますが、 日本のそれとは異なり、アメリカでは特定の宗派に肩入れすることを禁止するものであり、宗教教育それ自体を 禁止するものではないようです。本書では「見えざる国教」という表現がなされており、 主に貧困層の(判断能力というよりは)マインドに大きな影響を与えていることは間違いありません。 そしてキリスト教以外の宗教を排除する力が生じる土壌ともなっています。



覇権国を維持したいネオコン


ブッシュ就任後よく聞くようになったのがネオコンという言葉です。新保守主義派とよばれるこの人々は、 覇権国(hegemony)としてのアメリカの立場を維持するため、これまでどおり世界中ににらみを聞かせようという立場をとっています。 ただし、久しくアメリカは世界最大の債務国であり、そのスタンスは持たないだろうといわれ続けているわけですが、 このネオコンが宗教右派を焚きつけ、テロの脅威をアメリカにとっての悪という対立軸として固定化し、 イラク戦争に踏み切らせたと論じています。

そしてこのアメリカの覇権国としてのプレゼンスを維持しようとする強硬な姿勢が、 所謂グローバリゼーション(実態はアメリカナイゼーション)となって顕れるわけです。 その大義として宗教右派としての啓蒙思想がある、アメリカの存在を脅かす存在は全て悪とする、二項対立の構図です。

しかしこんな強硬姿勢が長続きするはずも無く、当時国防長官だったコリン・パウエルがネオコンを批判していたことは 記憶に新しいところです。




以前からアメリカの公教育の基盤が宗教教育にあることはアメリカ在住の知人から度々聞き及んでいました。 しかしここまで政治にはっきりと色合いが出るとなると日本人の感覚では通用しない国棚と再認識しました。 JGでも文明の衝突を高校の授業で扱うと聞いていますが、先進国にしてこれだけ宗教色が強い国は相当特殊です。

トランプも宗教右派を意識していないということはありえないはずです。実際、トランプが支持を集めたのは白人労働階級であり、 この層もまた上記の宗教教育を受けているであろうことは容易に想像されます。 トランプのわかりやすい語り口や俗人ぽさが受けた構図もブッシュJrと同じです。

普段対岸の国の政治を日常会話の中で語る中高生は少ないはずです。その中核にあるものがキリスト教という国も珍しいですが、 その珍しい国が日本が最も意識することの多いアメリカであるというのが注目すべき点です。 また少なからぬ数の学校がミッション系でもあれば、仏教系や宗教法人が母体でない学校に通う学生にとっても、 こうした話題は新鮮に映るのではないかと思われます。










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