[一貫校に通わせる父兄向]
ドラッカーとクリステンセン
に学ぶ中等教育の課題

keyword: ドラッカー,クリステンセン,中高一貫,オタク, 優等生,破壊的イノベーション
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ドラッカーとクリステンセンの著作を参照しつつ、中等教育の問題を概観します。




殆どの父兄は子供が山のような課題をこなしているのを見ると安心するため、 詰め込むタイプの塾に通わせたがるものですが、 その弊害は恐ろしいものがあります。


父兄が長期において望むものは何か


父兄は長期において何を望むのでしょうか。ほとんどすべての場合、 長期持続的にわたる収入の安定確保、 と答えることでしょう。

多くの進学校に通わせる保護者は資格や学歴を望みます。しかし資格は資産ではあるものの、 固定したキャッシュフローは約束しません。そして資格から得られるキャッシュの出所は国家の資産です。 よって国力が落ちれば資格の価値も減退するわけですが、 国内の経済成長に長期に渡る停滞は誰もが知るところです。 また学歴は学力水準の下限を裏付けても、生産性の高さの裏付けにはなりません。

では収入を安定確保するために必要なことは何でしょうか。公共機関であれば成果を上げることであり、 企業であれば持続的に営利活動を行うことです。ただし利益というのは企業にとって行動基準にしかなりません。 利益がすべての目的ではなく、持続させることが重要となるわけです。

しかしこの持続のためには、単調で均一な拡大成長というものはあり得ず、 大きなきっかけをなす破壊的イノベーションが断続的に必要となります。



持続的イノベーションと破壊的イノベーション


クリステンセンの3部作の一つ。 日本人が大企業信仰から抜け出れないのは、 持続的イノベーションを万能視し、 また破壊的イノベーションを生み出す 教育を受けていないためであることがわかります。

ここで学んでいただきたい言葉があります。持続的イノベーションと破壊的イノベーションです。

そもそもイノベーション(技術革新)とはなんでしょうか。科学的な文脈におけるそれよりも、 経済学的な文脈におけるそれの方が重要です。すなわち、それが起きることによって人々の生活水準が上がり、 より幸福な生活をもたらす製品や技術の浸透のことを指します。

持続的イノベーションとは、その中でも漸進的な変化のことをさします。 自家用車がモデルチェンジを繰り返してより快適で便利なものと変わるような場合です。 大企業や公的機関の多くが得手とするところです。

他方で破壊的イノベーションとは、インターネットやスマートフォンが出てきたときのように、 それにより産業構造自体が劇的に変化し、人々の生活のありようそのものを変えてしまうようなものをさします。 そのため 破壊的イノベーションはそれまででは考えられなかった範囲と深度で多くの人々に影響を与え、 富の再分配がなされます。動きが速過ぎると今日のアメリカのように社会に不安定性をもたらしますが、 それは政策レベルでの対応の仕方の問題です。破壊的イノベーションそれ自体は 経済成長を続けていく上で絶対不可欠なプロセスです。



破壊的イノベーションを阻害するオタク気質と内輪意識


しかしここで大きな問題が一つあります。優等生は多くの場合これを非常に苦手としている、という事実です。

オタクや内輪で固まるタイプは、組織を維持改善するために、あるいは生活上必要なことでも、 「関心がない」ことは全く学ぶ意欲を示さない、強い傾向があります。主にこれが社会不適合や、 人間関係を苦手にする引き金になります。 外から来る偶発的な事故や不確実性を前にすると、 備えがないのでお手上げになる。これが破壊的イノベーションを阻害してしまうわけです。

多くの優等生や父兄が望む「安定した」職業というのは、持続的イノベーションを手がける組織であって、 それ自体産業構造を変えません。よって周辺にも大きくポジティブな効果が顕れません。 加えて東大や医学科ばかりを望むのは属性による議論であり、 状況判断に基づくポジティブな判断とは到底いえません。

破壊的イノベーションを起こすためには、学業のみならず、事業全体を見渡せるだけの視野の広さが必要になります。 次に人を動かすリーダーシップ。必ずしも万能な能力は必要とされないものの、 部下や組織内外の人間を生かしながら動かすためには、人の考えを深く理解する力が何より必要になります。 しかし多くの優等生は互いに干渉しない傾向があり、またそのほうが楽であるため (つまり鍛えられていない)、この備えがありません。

第三に技術に対する理解。主に文系側はお手上げで、理系側の人間との断絶も激しく、 十分なコミュニケーションが成立しないことは、東電やJAL,日銀をはじめとする国内の大企業の失敗にも見られます。 そして大企業の多くには破壊的イノベーションを起こす力が無いことを示すかのように、 これらのいずれもが自力での立ち直りと信用回復が出来ていない状況です。 また多くの医療機関においてもビジネスを自ら生み出す力は持ちえません。そのため全くの外野である戦略コンサルに頼り、 更には失敗することも多々あります。

「理系は英語ができなくても通る」「数学ができないから文系」と言った後ろ向きな選択肢を取り、 また学習に時間と労力を割かない学生が後を絶たないため、こうした断絶がもたらす影響は、 持続的イノベーションのみでギリギリ持ちこたえることが出来ていた、 父兄が20代30代だった頃よりも深刻な影響をもたらします。

持続的イノベーションだけでは大企業や組織、産業は持たない、という事実があります。 そうであるがゆえに大企業というのは30年持たずして姿を消していくのですが、 この根本的な問題に優等生はその生い立ちからして解を持ち得ないのです。

当然、多くの父兄の期待に応えることもできないでしょう。また運良く持ちこたえたとしても、 自らその手で多くの人々を幸福にすることはできません。



中高一貫で量産されるオタクと醸成される内輪意識・同質化された共同体


では教育現場の実態はどのようなものなのでしょうか。


多くの中高一貫では、高校受験組と比して進学実績は圧倒的に良いですが、 反面オタクや狭い仲間内としか付き合わない学生が、 公立組と較べても量産されている事実がまずあります。

優等生やオタクの場合、大企業や官僚機構に順応するのは得意ですが、意識が集中する方向にばかり向いているため、 破壊的イノベーションを起こすベンチャーや小規模の組織で十分に機能することを不得手としています。

破壊的イノベーションにはリスクテイキングな行動と、水平的な視座からマクロや業界内の動向を丁寧に把握する力が不可欠で、 そのためには異質な他者との対話が必要になるわけですが、いずれをも苦手としています。

またそのプロセスにおいて創発的破壊(マネジメントが意図せずして起きる、 顧客からのポジティブな反応による事業の変化)も起きますが、過剰適合で視野が狭く、 それはそれとして活かせず、看過してしまいます。



破壊的イノベーションを実現するための教育の不在

そして現状中等教育においても、学部教育においても、 その旨の十分な教育は提供されていません。学校教師の許容範囲を大幅に超えることでもあれば、 父兄もそれを望んでいない、というよりはむしろ、 その重要性に気づいていないためです。

肩書きや属性を確保するため、進路選択においても保身に走りがちです。保身に足りうるだけの収入を、 手前の私的な投資の見返りとして得る分には批判を浴びない筈ですが、 そもそも多くの場合国の投資やら、 経済格差の固定化からくる優位な私的財産を投じられているにも拘らず、波及効果の弱さを実現してしまうため、 大多数の第三者からは不信感が募ることになります。

勿論そこには故無き嫉妬や怨嗟が絡むこともありますが、 国民経済を実現しうる程度の、言い方を変えると高度成長期からバブル直前期にかけてかつてあったような、 富の波及効果を生み出していない事実に変わりはありません。

他方で(教師・学生共に)当事者は自閉傾向が強く自覚が無かったり、あるいは逃避している場合も多々あります。 そもそも学校教師は科目指導が主なミッションでもあれば(向き不向きもあれば)、 それ以外にも山のような仕事があり、上記のような重い課題にまで 手が回らない状況です。更にいえば、 進学校の多くの子たちが自身の表情を表に出したがらないことも、こうした背景と無関係ではありません。

なすべきことは長期にわたる経済成長を実現するための、破壊的イノベーションを断続的に産み出す人材を育て上げることなのです。



多様性;人と向き合う意識と環境ーが価値を生み出す


そこで重要となるのが多様性(diversity)です。多様性が文化障壁を立て、価値を生み出す土壌を備えさせます。 しかし中学受験の頃から同質化された社会を温存している中高一貫や、 その先にある東大その他でこれを確保するのは不可能です。

そしてその空気に嫌気がさした一部の子は、海外進学をしたり、私どものような、 異質な他者との対話の場を重視する共同体に属することになります。

多様性が確保されていないと、どこに文化障壁を立てるべきかがわからなくなり、 よって価値を生み出す力を失ってしまいます。誰が何を欲しているか、そしてどのような組織を誰を対象として作り、 維持し、拡大すれば良いのか、わからなくなってしまうわけです。 それも小学生の頃から、 同質性に満ちた環境で形成されたidentityと深く結びついたレベルで。そして人格形成は高校卒業時でほぼ終わってしまいます。

人間関係が希薄なタイプは人を束ねることができません。よってマネジメントができず、 この人材は人を導かないということになります。ついているポストがどのようなものであれ、 周辺と連携するには誰もがマネジメント能力を必要とします。

制度や属性で切り分け、問題を解決するのではなくなんとか自分だけは回避しよう、という姿勢をやめ、 如何に問題を直視し、これを乗り越えていくかというポジティブな姿勢が父兄にも求められています。










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